恒例セミナー 令和3年度 国の住宅政策について | 日本合板商業組合【日合商関西支部報】

勉強会・研修会

2021年4月5日

勉強会・研修会恒例セミナー 令和3年度 国の住宅政策について

恒例セミナー 令和3年度 国の住宅政策について

講師は国交省住宅局木造住宅振興室長 遠山明氏
目玉の一つが「グリーン住宅ポイント制度」

日本合板商業組合関西支部(丸敏幸支部長)は2月5日(金)午後3時から中央区本町の大阪産業創造館5Fで恒例の研修会を開催した。例年なら200名を超す支部員らが参集するビッグイベントだが今年は折からのコロナ、事前に開かれた理事会出席者以外はリモートでの聴講となった。

冒頭、丸支部長が挨拶のなかで「コロナ禍で不安定な社会状況が続いているが本日はわざわざ東京から講師が駆けつけて下さりリアルな講演会が開催できた。最新情報のライブ発信です。我が木材・建材業界は他業界より恵まれてはいるが新たな予算が付く事業も多い。しっかりと情報をつかみ発信していきたい」と述べ、講師の遠山明国交省住宅局木造住宅振興室長が「非常事態ながら機会を与えて下さり感謝します」と挨拶して講演が始まった。

【第1部】

(1) 住宅を取り巻く最近の状況。

シンクタンクの予測では住宅着工戸数は2030年度には64万戸(60万戸説もある)に減少する。現在の住宅ストックは5362万戸(内6割が持家)。建替等による性能向上が必要な昭和55年以前の住宅が約1300万戸。また、既存住宅(中古)の流通シェアは約14.5%で欧米に比べると1/6~1/5程度と低い(米国81.0%、英国85.9%、仏国69.8%)。日本の住宅リフォームの市場規模も住宅投資の26.7%(約6.9兆円)にすぎず欧米諸国と比較して小さい。しかし、マンション市場における中古マンションの成約率は増加傾向にあり令和元年には新旧の販売戸数が逆転した。国は平成28年に閣議決定した住生活基本計画の中でも既存住宅市場の活性化に重点を置いた取り組み(インスペクション・安心R住宅等)を行ってきた。しかしその進展速度は極めて遅い。

(2)令和2年度補正予算と令和3年度予算案を使う事業

① 長期優良住宅化リフォーム推進事業(拡充)[3年度予算案45億円]=従来の補助に加えて防災型・レジリエンス性向上改修を追加。
② 地域型グリーン化事業(継続)[2年度補正10億円・3年度当初予算案140億円]=地域における木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷の低減を図るため、資材供給、設計、施工などの連携体制により、地域材を用いて省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅・建築物の整備、住宅の断熱改修の促進を図るとともに、若者・子育て世帯に対して支援する。令和2年度の採択グループ数は681件。
③ 環境ストック活用推進事業[3年度予算案74億9400万円]
④ 既存建築物省エネ化推進事業(拡充)[同74億9400万円]=従来の補助に加え改修後に耐震性を有することが要件に入り、補助対象に健康性・快適性向上改修工事、災害対策改修工事も補助対象となった。
⑤ 長期優良住宅認定取得促進モデル事業(新規)[同6千万円]
⑥ 省エネ住宅・建築物の整備に向けた体制整備事業(継続)[同5億円]
⑦ ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)等の推進に向けた取り組み。経産省・国交省・環境省が連携[同予算案。先導的な低炭素住宅=国交省74億9千万円、ZEHに対する支援=経産省83億9千万円・環境省110億円・国交省140億円]=2050年カーボンニュートラル実現に向けて関係省庁(経産省・国交省・環境省)が連携して、住宅の省エネ・省CO2化に取り組み、2030.年までに建売戸建や集合住宅を含む新築住宅の平均でZEHを実現することを目指す。
⑧ 木造住宅・都市木造建築物における生産体制整備事業[同5億円]=木造住宅の担い手である大工技能者の減少・高齢化が進む中、木造住宅及び都市部における非住宅や中高層の木造建築物(都市木造建築物)の生産体制の整備を図るため、民間団体等が行う大工技能者等の確保・育成の取組や、拡大余地のある都市木造建築物を担う設計者の育成・サポート等の取組に対する支援を行う。
住宅ストック維持・向上促進事業(延長・拡充)[同6億4100万円]=良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業。
❶グリーン住宅ポイント制度の概要[2年度第3次補正予算額1094億円]=昨年の11月10日に閣議決定。ポストコロナに向け、経済の持ち直しの動きを確かなものとし、民需主導の成長軌道に戻していくため、新たな経済対策の検討について内閣総理大臣より指示があった。高い省エネ性能を有する住宅を取得する者に対して、商品や追加工事と交換できるポイントを発行することによりグリーン社会の実現および地域における民需主導の好循環の実現等に資する住宅投資を喚起し、新型コロナウィルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復を図る。【別表参照】


■ポイントの発行=令和2年12月15日から令和3年10月31日までに契約を締結した一定の省エネ性能を有する住宅の新築(持家・貸家)、一定のリフォームや既存住宅の購入が対象。詳しくは国交省HP「グリーン住宅ポイント制度について」を参照のこと。

(3)長期優良住宅制度等の改善方策の検討。国は平成18年に定めた住生活基本法の精神に則りストック重視の住宅政策への転換が急務だと考えている。そのためにも10年後には住宅ストックの5%に当たる250万戸(現在は113万戸)を長期優良住宅にしたいと考えている。

(4)住生活基本法の見直しについて。社会資本整備審議会住宅宅地分科会の委員が新たな住生活基本計画案を検討中。脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成が加わる見込み。

【第2部】木造住宅の振興施策について

現状=世論調査では国民の3/4が木造住宅を指向。住宅ストック数の約57%、ストック面積の約68%が木造。住宅投資は民間投資の15%を占め関連を含めた経済波及効果は年間約12.7兆円。木造比率は約58%であり木造住宅は国民経済の重要な担い手である。木造住宅の約5割は年間受注戸数50戸未満の大工・工務店が供給している。大工就業者は平成27年で約35万人、20年間で半減。長期優良住宅認定取得割合は大規模事業者(年間供給戸数3000戸以上)が約8割である一方、中小事業者(3000戸未満)は約1割にすぎない。
■サスティナブル建築物先導事業(木造先導型)=木造化に係る住宅・建築物のリーディングプロジェクトを広く民間等から提案を募り、支援を行うことにより、総合的な観点からサスティナブルな社会の形成を図る。①多様な用途の先導的木造建築物への支援。実績合計105件②実験棟整備への支援と性能検証=CLT等新たな木質建築材料を用いた工法等について、建築実証と居住性等の実験を担う実験棟の整備費用の一部を支援。
■木造住宅・建築物の設計支援(都市木造建築物設計支援事業)=低層住宅やS造・RC造に加えて、非住宅や中高層の木造建築物(中大規模木造建築)に取り組みたいという設計者の技術向上を図るため、中大規模建築物の設計支援情報を集約一元化して影響するとともに、」設計者を育成する取組を推進する。

終了後の質疑応答では目玉事業である「グリーンポイント制度」の周知徹底を急ぐべきだという声が場内から数多くきかれた。

吉野石膏株式会社
トップページへ