令和5年度 国の住宅施策について | 日本合板商業組合【日合商関西支部報】

勉強会・研修会

2023年3月6日

勉強会・研修会令和5年度 国の住宅施策について

令和5年度 国の住宅施策について

すべての施策は2050年
カーボンニュートラルの実現に通ず
日合商関西支部研修会=WEB併催=

日本合板商業組合関西支部(丸敏幸支部長)は2月6日(月)午後3時から中央区南船場3の「TKP心斎橋駅前カンファレンスセンター」で恒例の研修会を開催した。通常なら200名を超す関西支部の関係者が参集するビッグセミナーだが長引くコロナ、前段で開かれた理事会出席者以外は3年連続のオンラインでの聴講となった。

細工屋忠佳氏の司会で始まり冒頭、丸支部長が「ウッドショックの後遺症でしょうか?まだまだ落ち着かない市況が続いています」としたあと「本日は講師の山下課長が遠路東京霞が関から一番ホットな情報を運んでくださった。ありがとうございます。国家予算のついた数々の施策をしっかりと把握して今後の商売に繋げてほしい。来年度は大きな会場を借りて大勢で直接聴講したいものです」と挨拶、研修会に移った。

講師は山下英和国交省住宅局住宅生産課課長、演題は「令和5年度 国の住宅施策について」。根底に流れる思想は「すべての施策は2050年カーボンニュートラルの実現に通ず」。住宅生産行政の最近の動向を5部に分けて説明した。

●第1部 住宅・建築物への木材利用の促進について
◎現状と課題
セミナーの導入部として山下課長はまず日本の森林の現状と課題を項目に分けて報告した。
◇国内の森林資源の現状=50年生を超える人工林が50%存在◇住宅・建築物における木材利用の3つの意義=①森林による二酸化炭素の吸収作用の保全と強化②二酸化炭素の排出の抑制等③山村その他の地域経済の活性化◇森林の若返り効果(伐って、使って、植える)◇炭素プールの効果(最近評価されるようになった)◇新築に占める木造建築物の割合(住宅・非住宅)中高層での木材利用の促進・木造住宅への国民のニーズ(3/4が木造志向)◇木造戸建住宅の工務店等規模別シェア(中小工務店が約半分)◇大工就業者数(令和2年30万人、20年間で半減。高齢化が顕著)。

◎木材利用促進への取組み
〇木材は森林が吸収した炭素を貯蔵するとともに、製造時等のエネルギー消費が比較的少ないとされる資材。住宅・建築物を木造で建築することにより、炭素の長期にわたる貯蔵等が可能。
〇2050カーボンニュートラルの実現に向け、住宅・建築物への木材の利用促進を図ることが課題。
❶規制の合理化=①建築基準法における木造関係規定の変遷(令和4年からCLTの基準強度に7層7プライ等の強度を追加)②木材利用促進のための防火基準の合理化(3000m2超の大規模建築物の全体の木造化の促進・大規模建築物における部分的な木造化の促進・低層部分の木造化の促進)

❷先進的な技術の普及の促進等=サスティナブル建築物等先導事業(木造先導型)木造化に係る住宅・建築物のリーディングプロジェクトを広く民間等から提案を募り、支援を行うことにより、総合的な観点からサスティナブルな社会の形成を図る。
(1)多様な用途の先導的木造建築物への支援。補助対象=民間・地方公共団体等。補助額=設計(費用の1/2)工事費(15%以内、上限5億円)
(2)実験棟整備への支援と性能の検証。CLT等新たな木質建築材料を用いた工法等について、建築実証と居住性等の実験を担う実験棟の整備費用の一部を支援。補助対象=民間・地方公共団体等。補助額=定額(上限30百万円)

❸優良木造建築物等整備推進事業(継続)=カーボンニュートラルの実現に向け、炭素貯蔵効果が期待できる木造の中高層住宅・非住宅建築物について、優良なプロジェクトに対して支援を行う。補助条件①主要構造部に木材を一定以上使用する木造の建築物等(混構造含)②耐火構造又は準耐火構造③不特定の者の利用又は特定多数の者の利用に供するもの④多数の利用者等に対する木造建築物等の普及啓発に関する取組がなされるもの⑤省エネ基準に適合するもの(公的主体が事業者の場合はZEH・ZEBの要件を満たすもの)⑥補助率1/3(上限300百万円)

◎住宅における木材の利用の促進
❶地域型住宅グリーン化事業(拡充・見直し)
地域における木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷の低減を図るため、資材供給、設計、施工などの連携体制により、地域材を用いた省エネ性能に優れた木造住宅(ZEH等)の整備等に対して支援を行うとともに、地域材の活用促進の支援を強化する。

❷安定的な木材確保体制整備事業(住宅グリーン化事業の一部)
木材の価格急騰・需給逼迫を踏まえ、中小工務店、建材流通事業者、製材事業者、原木供給者など関係事業者の連携による安定的な木材確保に向けた先導的取り組みを促進する。

❸木造住宅・都市木造建築物における生産体制整備の推進(継続)
木造住宅及び非住宅や中高層の木造建築物(都市木造建築物)の生産体制の整備を図るため◆民間団体等が行う大工技能者等の確保・育成の取組について中小工務店等のDX推進による労働環境向上を図る取組を重点的に支援する◆都市木造建築物を担う設計者の育成・サポート等の取組について、地域のおけるプロジェクト実施に向けた関連事業者間の連携体制構築に係る取組を重点的に支援する。

吉野石膏株式会社

●第2部 建築物省エネ法等の改正
≪改正建築物省エネ法等の背景・必要性、目標・効果≫
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向け、2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化=①エネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策の加速②木材需要の約4割を占める建築分野での木材利用の促進。

❶省エネ性能の底上げ=全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け。2025年度に施行。建築確認が下りなくなる❷より高い省エネ性能への誘導❸ストックの省エネ改修❹再エネ設備の導入促進

●第3部 令和4年度第2次補正予算及び令和5年度予算
(1)こどもエコすまい支援事業(補正予算:1500億円)
エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能(ZEHレベル)を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等に愛して支援することにより、子育て世帯・若者夫婦世帯による省エネ投資の下支えを行い、2050年カーボンニュートラルの実現を図る。ZEH住宅(100万円/戸)、省エネ改修(30万円/戸)

(2)住宅の省エネリフォームへの支援の強化(補正)
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性の向上に資する改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化への支援を強化するのが目的。国交省・経産省・環境省の三省が連携。補助対象は高性能の断熱窓・高効率給湯器等。

(3)LCCM住宅の整備の推進について
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅の脱炭素化を推進するため、先導的な脱炭素化住宅であるLCCM住宅の整備に対して支援を行う。LCCM住宅=使用段階のみならず資材製造や建設段階等におけるCO2排出量の削減、長寿命化を図りつつ、創エネルギーにより、ライフサイクル全体(建設、居住、修繕・更新・解体の各段階)を通じたCO2排出量をマイナスとする住宅。

(4)省エネ基準適合の融資要件化
脱炭素社会の実現に向けて、省エネ性能の底上げを図るため、フラット35を利用する新築住宅を対象とした融資について省エネ基準適合を要件化する。

(5)建築物火災安全改修事業(新規)
大阪北区のビル火災を踏まえ、既存建築物の防火上・避難上の安全性の確保を図るため、建築物の火災安全改修を支援する事業を創設。

(6)空き家対策総合支援事業・空き家再生等推進事業・長期優良住宅化リフォーム推進事業等の施策。

●第4部 令和5年度税制改正
創設=長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置。その翌年度に課される建物部分の固定資産税額を減額する。
延長=空き家の発生を抑制するための特定措置(3000万円)を4年間延長

●第5部 その他
国交省は空き家対策に力を入れて取り組むため社会資本整備審議会住宅宅地分科会の下に「空き家対策小委員会」を設置し、必要な検討を行う。

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