シリーズ『日はまた昇る』 | 日本合板商業組合【日合商関西支部報】

業界

2024年1月22日

業界シリーズ『日はまた昇る』

シリーズ『日はまた昇る』

猪飼野の巻=昭和22年11月=

〇猪飼野運河の両岸を中心に、北は丸一橋より南は大池橋、東は中川町を境に一巡する
〇西岸南より先ず株式会社宝製材所は翼車両工業の後進で製材と雑木が専門、進駐軍の御用達で河内糺、繁田喜蔵両重役が健闘する
〇株式会社岡房商店はこの方面の草分けで社長は岡本佐一氏(43)材親会長、市売買方組合理事長等々肩書多く、気前は日本晴れの人気者、この人の主義は「人間は得意の時代に逆境に落ちた時の事を思え、金は貯めようと思うな、飲んで食って着て恵んで与えて、それで余ったら残しておけ」と至極欲の浅い人なれど、積善の家に余慶あり、近年は金が余り過ぎて困っている、一家円満、かくし芸は吃らぬ活弁マーラー青年
〇東亜合板商行は麹谷忠夫氏主宰、忠夫氏は麹谷市議の実弟で才気溌剌の手腕家
〇花井木材工業の社長花井義夫氏(53)は大和の人で猪飼野の古狸で町内の世話役
〇八幡谷伊兵衛氏(40)は赤清出で堅実一方、金儲けに抜け目なし
〇赤壁清兵衛氏は元大黒橋今は立葉町に店あり、出すことは舌を出すのも嫌い
〇高市田中五市良氏(55)は高吉出、手堅く息子は模範青年、家はきたないが儲けている
〇麹谷製材所、麹谷光三氏(42)は立命館出、この付近の学者で製材組合の副組長市議会議員の花形男前よし、商売は専務の朝鮮人に一任、この専務中々のやり手なり
〇手島兼一氏(46)大木商行を出て最近開店、長男文男君(23)に近日花嫁さん来る
〇西村木製器具製造会社の工場は第一流
〇電車通りを北へ越して佐々岡政勝氏は土佐出身で船場木材の重役さんで円満型
〇丸一橋西詰は宮奥岩太郎(44)商店、善太郎氏の養子さんで名の如く堅い人商売熱心
〇中島定次郎氏(39)屋形屋で純朴な人物
〇丸一橋東詰の戸田秀太郎氏(56)小野市出の堅実一方で儲け上手、東成会長材親会副会長の世話役、頭白く槍さびが十八番
〇末松次三郎氏(50)小林町で焼けてここに開店品豊富、息子さんよく働く
〇山本恭嗣氏(55)ベニヤと雑木屋、目先早く儲けている、取引きれいな人
〇宇井福次氏(46)土建で地道な人
〇川端音吉氏(51)お金持ち、昨年末の類焼で丸焼け今は新築落成して店光る、主人は病気で外出せず忠義な番頭さんに商売一任

〇吉野合板商会、この付近で一番古いベニヤの店でよく売れる
〇吉川保信氏(26)川音出の新進で奥さんは肩でイキをしていらっしゃいます
〇小路定太郎氏(47)堀止から来た人、顔も気前も平清盛の若い頃に似ている
〇山本幾太郎氏(47)元西岸で製材所、今は鶏を飼っているが近く復興するらしい
〇紀之治岡本治兵衛氏(64)紀の興出、昔堅気のカチカチ屋岡房の叔父さん長男三男戦死し二男四男生還、二男悦二君の夫人は住吉山源の娘さんで来月パンクする、男の子
〇猪飼野大通り大池橋筋の何千坪に材木屋、大池湯、大池市場、その周囲に新築貸家数十戸持って、どこからどこ迄自分のやら境が分からんと言うが逢う人が皆お辞儀をする、布袋さんのヘソみたいな顔尾をした厚子のおっさん、知らん人はテーン屋かと思う之が生野の義人と言われた山田善一氏(52)で東大阪第一の太っ腹、材木屋には惜しい程の男、金は儲けるよりも公共に寄付するのが好きで道楽なし、奥方(42)は紀の楠のとうちゃんで美人、五男二女の母
〇坂上清治氏(31)真の大阪商人で売上第一、如才なく人ざわりよく評判よし
〇八太幾太郎氏(55)川筋で一番古い店、地味に儲ける江州商人で酒も女も大好物
〇生駒一幸氏(47)塵も積もれば山となる
〇河野樵太郎氏(50)地木社時代に光った人、人間が利巧過ぎて商売は下手
〇松山秀秋氏(54)河作出の古い雑木屋で温厚な人、野球が好き
〇今里ロータリーの新興木材工業は下市が本社、中西清治君(18)が主任で上成績
〇中川町の生野木材株式会社の社長金子健吉氏(58)は市会議員で財界屈指の雄弁家、ハゲ頭と養子番付の三役で商売よりも世話が好き、戦争中は詩吟で士気を鼓舞したもの
〇小松製材所の社長木理福松氏(45)は丹下左膳で豪腹な人、今里のお茶屋は奥さん任せ
〇尾の民辻民三郎氏(55)はオニ熊出のホトケさん、材親会の古顔で堅実な人、一粒種の多喜男君(27)中支より未だ帰らず、朝夕神仏に念ずるは只愛息の事ばかり

吉野石膏株式会社
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