「令和6年度 国の住宅施策について」
日合商 関西支部 研修会=2月7日=開催 | 日本合板商業組合【日合商関西支部報】

勉強会・研修会

2024年2月15日

勉強会・研修会「令和6年度 国の住宅施策について」
日合商 関西支部 研修会=2月7日=開催

「令和6年度 国の住宅施策について」<br /> 日合商 関西支部 研修会=2月7日=開催

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて
子育て支援とZEH・ZEB等の省エネ対策

日本合板商業組合関西支部(丸敏幸支部長)は2月7日(水)午後3時から中央区南船場3の「TKP心斎橋駅前カンファレンスセンター」で恒例の研修会を開催した。コロナ禍のため4年ぶりのリアルでの開催、組合員・賛助会員ら142名が参加した。

細工屋忠佳氏(丸産業)の司会で始まり冒頭、丸支部長=写真=が「5類に移行して1年近くたち世の中の動きが一気に加速した。その反面、住宅業界は徐々に厳しさが増している。昨年まではウェブ中心だったが今年は生で聴けます。国会会期中にも拘わらず山下課長が来阪くださった。生き残るための一助、何かヒントを掴んでください」と挨拶、研修会に移った。

講師は昨年と同じ山下英和国交省住宅局住宅生産課課長、演題は「令和6年度 国の住宅施策について」。施策の根底に流れる思想は「2050年カーボンニュートラルの実現」。

【Ⅰ】令和6年度予算の主要事項(抜粋)

1.誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保(子ども・子育て/セーフティネット/バリアフリー)
≪背景・課題≫少子高齢化[出生数270万人(1949)➡77万人(2022)、人口1.28億人(2008)➡0.87億人(2070)、単身高齢者世帯数630万世帯(2015)➡800万世帯(2030)]が加速して子育てしやすい住まいが不足し高齢者の住まいも大家の不安感もあってミスマッチが生じる。
≪施策≫〇フラット35のこどもの人数に応じた金利の引き下げ〇公営住宅ストック等の子育て活用〇民間住宅ストックの子育て活用〇既存建築物のバリアフリー改修等への支援。

2.住宅・建築物におけるカーボンニュートラルの実現。(省エネ対策/木材利用の促進)
≪背景・課題≫2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向けて、住宅・建築物の省エネ対策の強化、木材利用の促進を図る。住宅・建築物のエネルギー消費は全エネルギー消費の約3割に当たり、この分野の省エネの実現が公約遵守の肝になる。
≪施策1.省エネ対策≫〇新築住宅・建築物の省エネ性能の引き上げ=子育てエコホーム支援事業の重点的な実施によるZEH・長期優良住宅整備への支援の強化・公営住宅のZEH化への支援・モデル事業への支援 〇既存住宅・建築物ストックの省エネリフォームの促進=公営住宅・UR賃貸住宅の省エネ改修への支援・長期優良住宅化リフォームへの支援・既存住宅・建築物の省エネリフォームへの支援
≪施策2.木材利用の促進≫〇木造建築物等の規制合理化に向けた基準整備 〇優良な木造建築物等の整備等への支援

3.住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備(防災・減災/公営老齢化/密集市街地)
≪施策1.防災/減災対策≫〇民間建築物の耐震改修への支援 〇災害時の一時避難場所整備への支援 〇災害リスクの高いエリアにおける新築支援抑制
≪施策2.公営住宅の老朽化対策≫〇老朽化した公営住宅建替えへの支援
≪施策3.密集市街地の整備改善への支援≫〇密集市街地の整備改善への支援 〇狭隘道路対策への支援強化

4.既存ストックの有効活用と流通市場の形成(空き家/マンション/既存流通・リフォーム)
≪背景・課題≫使用目的のない空き家の急増[182万戸(1998)➡349万戸(2018)1.9倍]。郊外住宅団地の急激な高齢化と空き家急増懸念。高経年マンションの増加と居住者の高齢化[築40年以上;29万戸(2012)➡126万戸(2022)]。マンションの管理不全・老朽化
≪施策1.空き家対策等への支援≫〇空き家の除却・活用促進への支援 〇郊外住宅団地の再生に関する支援
≪施策2.マンションの長寿命化等の推進≫〇老朽化マンションの再生円滑化への支援〇管理不全マンションの管理適正化等への支援
≪施策3.既存住宅流通・リフォーム市場の活性化≫〇インスペクション普及への重点支援 〇既存住宅の性能控除リフォームへの支援

5.住宅・建築分野のDX・生産性向上の推進(建築BIM/建築確認のオンライン化/国際展開)
≪背景・課題≫〇住宅・建築分野における社会情勢の変化(技術者の高齢化・ライフサイクルカーボンの評価・データ活用による新ビジネスの抄出や海外展開) 〇住宅・建築分野のDXの推進(建築BIMの「社会実装・建築行政手続の効率化・労働環境の向上に向けた効率化」
≪施策1.DX等の推進による生産性の向上≫〇中小事業者等への建築BIM導入支援 〇空き家対策におけるDXの推進 〇IoT技術を活用した住宅の普及への支援
≪施策2.建築行政手続のDXの推進≫〇建築確認のオンライン化・建築BIMによる建築確認の推進 〇中間・完了検査の遠隔実施等の推進
≪施策3.住宅・建築分野の国際展開≫〇新興国等における事業展開への支援(可能性調査、研修会開催等)

吉野石膏株式会社

【Ⅱ】令和5年度補正予算(抜粋)

❶子育てエコホーム支援事業(5年度補正2100億円、6年度予算案400億円)=子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資を下支えし2050年カーボンニュートラルの実現を図る。①長期優良住宅100万円/戸 ②ZEH住宅80万円/戸
❷住宅の省エネリフォームへの支援の強化=2050年カーボンニュートラルの実現に向けて家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性の向上に資する改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化への支援を強化するのが目的。国交省・経産省・環境省の三省が連携。補助対象は高性能の断熱窓・高効率給湯器等。

【Ⅲ】住宅・建築物における木材利用の推進(抜粋)

≪背景・課題≫木材は森林が吸収した炭素を貯蔵するとともに、製造時等のエネルギー消費が比較的少ないとされる資材。住宅・建築物を木造で建築することにより、炭素の長期にわたる貯蔵等が可能。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅・建築物への木材の利用促進を図ることが課題。

❶規制の合理化=①3000m2超の大規模建築物の全体の木造化の推進 ②大規模建築物における部分的な木造化の促進 ③低層部分の木造化の促進。防火規制については令和6年4月施行予定。
❷先進的な技術の普及の促進等=①中大規模木造建築物のプロジェクト等を支援 ②中大規模木造建築物の設計に資する技術情報を集約・整理し、設計者へ一元的に提供。
❸住宅における木材の利用の促進=①地域の中小工務店が資材の供給者等と協力して行う省エネ性能に優れた木造住宅等の整備を支援②民間団体が行う大工技能者等の確保・育成の取組を支援。
❹中大規模建築物普及及加速化プロジェクト=昨年からスタート。3階を超える建築物の木造化比率が低いため、都市の木造化推進法に基づき民間建築物を含めた木造化を加速するため、木造4階建ての事務所や共同住宅をモデルに、コスト、施工性等において高い競争力を有し、広く展開できる「構法」とそれを実装する「部材供給の枠組み」を取りまとめ、普及を図る。
❺花粉症対策=今や国民病と称される「花粉症」対策として林野庁と連携しつつ国産材「特にスギ材」を活用し「花粉症対策への貢献度」等の表示の仕組みを構築する。

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