令和7年度 国の住宅施策について | 日本合板商業組合【日合商関西支部報】

勉強会・研修会

2025年2月13日

勉強会・研修会令和7年度 国の住宅施策について

令和7年度 国の住宅施策について

講師は松野秀生国交省住宅局課長
日合商関西支部の研修会に178名=2月7日=開催

日本合板商業組合関西支部(桑原健郎支部長)は2月7日(金)午後3時から中央区南船場4の「TKPガーデンシティPREMIUM心斎橋」で恒例の研修会を開催,組合員・賛助会員ら178名が参加した。

久我洋一副支部長(久我社長)の司会で始まり、国会会期中にも拘わらず来阪した国土交通省住宅局住宅生産課松野秀生課長が「住宅・建築行政の最近の動向」をテーマに1時間講演した。各施策の根底に流れるのは「2050年カーボンニュートラルの実現」。

❶令和6年能登半島地震への対応
先ず松野課長は、2011年の東日本大震災に始まり2016年熊本地震、2018年西日本豪雨、2020年コロナウィルス感染症、2024年能登半島地震などの災害等と戸建住宅の着工数の推移をグラフで示しながら、災害時における応急仮設住宅等の建設についての国の施策を説明した。

新規事業として現在国会で審議中の「暮らし維持のための安全・安心確保モデル事業」は地方公共団体と締結する災害協定等の内容に応じ、一定のエリアにおいて横連携を図る地域の住宅生産事業者等で構成されるグループが災害発生時に備えて事前に実施するモデル的取組を支援する事業。また耐震改修を行った木造建築物はそうでない建築物より被害割合が低く、耐震改修により被害が軽減されたというデータがあり耐震改修効果の有効性が認められた。同氏は「耐震改修にかければかけるだけの効果はある。データが物語っている」と話す。高齢者は自分の貯金は将来の医療費のために温存する傾向がある。そのため耐震改修への補助金限度額の増額や融資の無利子化・低利子化を図る。

❷住生活基本計画の見直し
2006年に制定された住生活基本計画は5年に一度見直される。現行の基本計画は次の「3つの視点」から「8つの目標」を設定し、施策を総合的に推進している。①「社会環境の変化」=目標1.「新たな日常」、DXの推進等、目標2.安全な住宅・住宅地の形成等 ②「居住者・コミュニティ」の視点=目標3.子供を産み育てやすい住まい、目標4.高齢者が安心して暮らせるコミュニティ等、目標5.セーフティネット機能の整備 ③「住宅ストック・産業」の視点=目標6.住宅循環システムの構築等、目標7.空き家の管理・除却・利活用、目標8.住生活産業の発展。来年の今頃から見直しの議論になる。住生活を巡る社会課題への対応も2050年を見据えた方向性の議論となる。

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❸令和7年度住宅局予算案・税制改正
1.住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備~令和6年能登半島地震の被害を踏まえ、防災・減災対策を強化する~
〇耐震化の加速=補助限度額の引き上げ、高齢者向け耐震改修融資(リバースモーゲージ)の無利子化等、緊急輸送路沿道のテナントビル
等の耐震化支援の強化
〇住宅・建築物の事前防災対策の強化
〇被災地における恒久的な住まいの確保

2.既存ストックの有効活用と流通市場の形成~老朽マンション対策をはじめ、既存ストックの長寿命化と更新を促進することにより良質な住宅ストックの形成を推進する~
〇マンション対策の強化
〇空き家対策・郊外住宅団地再生への支援
〇良質な住宅ストックの形成

3.住宅・建築物における脱炭素対策等~2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅・建築物分野の脱炭素化を促進するため、省エネ対策に加え、建築物のライフサイクルカーボン削減に向けた取組を推進する~
〇省エネ性能向上の促進①住宅・建築物の省エネ性能の引き上げ。
「子育てグリーン住宅支援事業」の創設等
〇ライフサイクルカーボン算定・評価の推進
〇木材利用の促進=木造建築物等の規制合理化に向けた基準整備、優良な中大規模木造建築物の整備等への支援

4.誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保~子育て世代が安心して暮らせる住まいの実現や住宅セーフティネット機能の強化を図る~
≪背景・課題≫少子高齢化[出生数270万人(1949)➡77万人(2022)、高齢者2204万人(2000)➡3623万人(2023)]が加速度を増して進んでいる。

5.住宅・建築分野のDX・生産性向上の推進等~社会全体のデジタル化に向け、住宅・建築分野におけるIT活用等の新技術実装等を推進する~
〇DX等の推進による生産性の向上=建築GX・DX推進事業の創設(建築物のLCAの実施によるLCCO2削減と建築BIMの普及拡
大による生産性の向上の推進を一体的に支援・IoT技術を活用した住宅の普及への支援)
〇建築行政手続等のDX推進
〇住宅・建築分野の国際展開

松野課長は令和6年度補佐予算の概要(住宅局関係)を説明したあと、住宅省エネキャンペーンにおける三省(国交省・経産省・環境省)の取組を紹介し、個別テーマを簡単に説明して講演を終了した。

❹個別施策テーマ(抜粋)
〇カーボンニュートラル・木造推進等の動向~2025年4月から始まるルール改正~3つのルールが改正される。
①すべての新築で省エネ基準適合の義務化
②木造戸建住宅の建築確認手続き等の見直し
③木造戸建住宅の壁量計算等の見直し

※2025年度の省エネ基準適合の義務付けの後、遅くとも2030年までに省エネ基準をZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能まで引き上げ予定。その後は継続的に見直す。すべての施策は2050年カーボンニュートラルに通ず。

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