業界シリーズ『日はまた昇る』
昔の材木屋 境川の巻 =昭和22年4月=
境川町は川を挟んで北境川は西区、南境川は港区に編入。戦災後、北境川の復興遅々、南境川は皆無にて幸町や西長堀・横堀などの木材街の目覚ましい復興ぶりに比し境川町は鉄屋に征服された感がある。先ず北境川1丁目から
●京竹製材は復興工事の最中で大島淳一氏の涙ぐましい努力が報いられる日も近い。木下治三郎氏は大木社の重役など早く辞めて本業に掛かること
●電車道に吉村留一氏の轟建材店というのができた。奥さんは洗い髪のお妻のような美人
●豪壮な森平の居宅も藤井愛之助氏が早月女史との愛の巣も焼けてはかなき夢のあとを過ぎて2丁目には故松浦長太郎氏三男文男君が元の場所で開業している
●その西隣の山嘉楢崎伝蔵氏が二階建てを新築中。続いて藤本伊之助氏も工事中
●北六橋の元には宇治の火薬爆発で逝った川口氏令息幸雄君の境川木材工業㈱
●その西に柴多久哉氏の店が本格の建築で光っている倉庫も立派、品も豊富だ
●三輪製材所も復興七本指の喜一氏も雄飛している池田の荒井喜三郎氏もここで挽く
●辰巳橋元には合川國太郎商店、田村重出の好漢にて柴多とここが儲け頭と町内の噂
●電車道には長谷悦蔵商店で北廣出の雑木と製材の新進
●北境川4丁目に栗本製材所山形県栗本元也という製材屋には男振が好過ぎる主人
●以上で北境川は終わりだ。玉船橋を渡って南境川を東向けば鉄屋ばかり、途中滋賀木材の標札あり、2丁目には川口製材が復興している
●北村製材所というのもある
東堀の巻 =昭和22年2月=
●東区本町橋を東に渡って内本町橋詰町に中川木材商事株式会社の本町営業所がある。社長は中川秀助氏、主任は井口道之助君。泉尾からここへ将棋の角道に大手へ進出
●本町橋東詰には三軒家の永井半店ができている。当主は同志社での永井慶三君
●その南方には木下五郎商店の乾辰巳張りの木場あり
●農人橋の南、材木町には熊澤商店、社長覚郎氏は健康やや曇後晴主任は三浦金吾君
●そげ重土蔵が残って家丸焼け、小屋がけに店主大岡重兵衛氏と長男商大出の太郎君が通勤営業。秀才太郎君にはお嫁さんを物色中
●和泉町には天満木材、社長は今九、専務は高正
●住吉町の前田清一商店父は店員、息子が店主。先夜泥棒が入って車一台置いて逃げた