業界シリーズ『日はまた昇る』
横堀の巻 =昭和22年3月=
●東区横堀2丁目より南下す。志方重は焼け残りて店貸しいる
●志方平島上鶴太郎氏は物故し島上平一君偉業を継ぎ新築して捲土重来の意気満々
●3丁目に業界の新鋭坂本鶴太郎氏の坂本建材商会の本陣がある。支配人矢倉重雄君好評、営業の中心を宗田ビルよりここに移して益々活気あり
●4丁目は加地製材所で嵯峨のサン製材と姉妹製材、加地健三郎氏賃挽大勉強、丸鋸のほかに手押台車据え付け
●松川建築事務所は新進松川浩氏の経営で前途有望
●本町線の電車の角の新築は紀州尾鷲の大同木材株式会社で姉妹会社に大同造船あり、大分大物らしい
●その南隣に今平こと今西平浩氏が新築中で4月開店、再び横堀で花を咲かす
●吉野工材株式会社は大和下市が本社で大阪営業所長は福久の福谷秀穂氏が上品に活躍、特産吉野材の専門店
●軒を並べて日本銘木株式会社元の第4営業所で霜音さん本田音吉氏が社長で専務は西川清五郎氏、常務は篠部福松氏・井上義雄氏、監査役は大野梅吉、丸岡兵三の両氏
●田中組の製材所を隔てて5丁目には豪華な霜寅商店が落成している。吉野工材の社長52歳の海堀寅造氏は両びんに霜降り鼻下ヒゲも白く落ち着きあり、横堀随一の人物
●向こうに見ゆるは義祐商会、上海土産で有名なドシャ降りの丹義治さんと今伊の今木祐吉氏の共同経営
●坐摩神社の前には信念の人大阪復興木材商会森本勝繁氏
●浦山林業株式会社は新築中
●助右ヱ門橋の袂6丁目の角の大政あと旧第3営業所は大阪銘木株式会社、天下の銘木ここに集まり、横堀の銘木屋ここに集まった感あり。社長大政河野房次郎に取締役は大澤昇、疊谷仁三、進藤治三郎、丸岡順造、大澤幸次郎、北川定一、吉田義昭の諸氏に霜寅さんと島澤福太郎氏の監査役で固めている
●太洋木材工業株式会社社長は當舎一雄氏で西昌夫、栗田英三、佐々木廣作の四天王でフローリングの製材工場落成
●日下部商会は日下部定助氏、北山丸太の本場の人で温厚也。京洛木材工業の営業所もあり
●大善工務店には込茶喜成という珍な表札が掛かっている
●昔乍らの古石銘木店
●船場木材株式会社は横堀はづれの営業ぶり、社長は廣瀬久治郎、専務は中村福松、常務は笹岡政勝の各氏で活況を呈す
●ここから区が変わって南区となり南区横堀7丁目
●後川材木店こわいこわい
●竹内木材株式会社は吉野から進出してきた新しい店
●日新木材工業株式会社大阪営業所は京都が本社で店立派
●大二新興株式会社出張所長は櫻井圭二氏、京都が本社、第二木廠の引き上げ社員雲の如し
●そもそも関西銘木株式会社は資本金1億9500万円の大会社にして社長は熊善兵衛、専務松田實太郎に今木祐吉、北尾盈夫、大西亀太郎が取締、監査には今木善助、斎藤彌七の各氏で一時は材界の大久保彦左衛門と云われた長彌のおん大が天井板をこすっているのは有為転変の世の中かな。相談役に津田良太郎、楠正治氏を入れて何を相談するのやら
●最後が富士保商店片山保太郎氏のモダンな店の銘木屋。京都の産で富士長の別家で金あり面白半分のご商売
●現在では横堀も以上25,6軒の復興や進出ぶりで元の盛観を呈するのも程近し