令和4年度 国の住宅施策について | 日本合板商業組合【日合商関西支部報】

勉強会・研修会

2022年3月3日

勉強会・研修会令和4年度 国の住宅施策について

令和4年度 国の住宅施策について

根幹はカーボンニュートラル 脱炭素社会の実現
スピーカーは宿本尚吾国交省課長=2月4日=

日本合板商業組合関西支部(丸敏幸支部長)は2月4日(金)午後3時から中央区南船場4の「アットビジネスセンター心斎橋駅前」で恒例の研修会を開催した。通常なら200名を超す支部員らが参集するビッグセミナーだが昨年からのコロナ騒動、前段で開かれた理事会出席者以外は2年連続のリモートでの聴講となった。

冒頭、丸支部長が挨拶のなかで「コロナ対応と仕事のやりくりに翻弄され苦労されていることと拝察します。ウッドショックとは言え業界は決して悪くはないが値上げ対応に時間がとられている。本日は宿本課長がWEBを使って霞が関から一番ホットな情報を講演される。先行き不透明だが是非今後の業務に活かしてください。当支部はこれからもいろんな形で情報を発信したい」述べ、研修会に移った。

講師は奈良県出身の宿本尚吾国交省住宅局住宅生産課課長、演題は「令和4年度 国の住宅施策について」。

●第1部「住宅・建築物への木材利用の促進について」

国は今、木材についてどう考えているのか?「国の危機感は尋常ではない」として宿本課長は先ず令和2年10月の菅総理の所信表明を紹介した。
『…成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する。2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言します(抜粋)』。

もはや温暖化への対応は経済成長の制約ではない。積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変化をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要だ。鍵となるのは革新的なイノベーションだが木材関連としてはグリーン投資の更なる普及が必要だ。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的なグリーン化により世界のグリーン産業を牽引し経済と環境の好循環を創り出す。ESG投資は欧州ではすでに主流となりアメリカも時間の問題だが日本はこれからだと宿本課長。

また菅総理の令和3年4月の気候変動サミットでの発言「2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに50%の高みに向けて挑戦します(中略)世界のものづくりを支える国として脱炭素化のリーダーシップをとっていきたいと考えている」が象徴するように環境に資する法令が目立っている。5年ごとに改定される「住生活基本計画」では「新たな住生活基本計画(令和3年度から令和12年度)」が策定され、そのなかでも特に「気候変動問題」がクローズアップされている。「住宅ストック・産業」の視点では木材関連業界にとっては目標6・住宅循環システムの構築等目標8・住生活産業の発展の2項目が注目される。

吉野石膏株式会社

▼目標6・脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成
世代を超えて既存住宅として取引されるストックの形成のための施策=①2050年カーボンニュートラルに実現に向けて…長寿命でライフサイクルCO2排出量が少ない長期優良住宅、ZEHストックを拡充、CO2排出量をマイナスにするLCCM住宅の評価と普及推進②炭素貯蔵効果の高い木造住宅等の普及やCLT等を活用した中高層住宅等の木造化により、まちにおける炭素の貯蔵の促進

▼目標8・居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展(人材の問題)
地域経済を支える裾野の広い住生活産業の担い手の確保・育成=①大工技能者の担い手の確保・育成の推進。地域材の利用や伝統的な建築技術の継承、和の住まいを推進②CLT等の新たな部材を活用した工法等や中高層住宅等の新たな分野における木造技術の普及とこれらを担う設計者の育成等。

国の国際公約である「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた取り組みは❶家庭・産業部門(住宅・建築物における省エネ対策の強化)❷エネルギー転換部門(再生可能エネルギーの導入拡大)❸吸収源対策(木材の利用拡大)の3部門で進める。省エネ部門で木造建築物等の果たす役割は大きく、種々の法律がバックアップする。また再生可能エネルギー部門はバイオマス発電とZEHは木材関連も関与するが何といっても炭素吸収源(貯蔵含む)としての森林や木造建築物の存在が極めて大きいと言える。

つまり木造建築物等の普及拡大が「2050年カーボンニュートラルの実現」という国際公約を遵守するための救世主(特効薬)だと国も認めている。
宿本課長はこうした国の流れを受けて日本の木造住宅の推移や大工の漸減等の実情を表と数字を示して説明、令和3年度までに国が果たした数々の施策を報告した。

木造化を阻む最大のハードルは法律。建築基準法や消防法は「木は燃える、腐る」という過去の常識を引きずっている法律だ。加えて木造の知識を有する人材の少なさ、大工の減少に「木は高い」という誤解。宿本課長は「国際公約実現に向け規制緩和は徐々にではあるが進展している、国は本気です」として種々の規制緩和に向けた取り組みを紹介し「階数の高い木造建築物が増えてきている、が関西は少ない」と笑いながら苦言を呈した。

●第2部令和3年度補正予算及び令和4年度予算

▼こどもみらい住宅支援事業(3年度補正542億円)
子育て世帯や若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等に対して補助。

▼住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業(4年度予算200億円)
省エネ性能の高い住宅・建築物の整備や既存住宅の改修等を総合的に推進する。
① LCCM住宅整備推進事業(新規事業)=ライフサイクル全体を通じたCO2排出量をマイナスにする住宅(LCCM)の整備を支援
② 地域型住宅グリーン化事業=中小工務店によるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の整備等を支援
③ 優良木造建築物整備推進事業(新規事業)=主要構造部に木材を積極的に使用した非住宅建築物・中高層住宅の整備を支援
④ 長期優良住宅化リフォーム推進事業=既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームを支援
⑤ 住宅エコリフォーム推進事業(新規事業)=既存住宅の省エネ改修を支援

WEBでの講演だったため質疑応答の時間はなかったが「環境と木材」の親和性が強調された説明だった。

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